□2006年春季東京六大学リーグ戦 戦評
2005.4.8~5.28(予定)
4月15日(土) 対 東京大学 一回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 東大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 早大 | 0 | 3 | 2 | 0 | 0 | 1 | 4 | 0 | X | 10 |
○宮本、松下、大前―笹沢 本塁打:上本(満塁)
<戦評>
まずは“想定内”のワンサイドゲームだった。先発の宮本が2イニングをピッシと抑えた2回裏、一死から田中幸と松本が連打、野手並みの打撃を見せる宮本が左中間安打して先制。満塁とした二死後、前田将が一・二塁間突破の2点適時打して3点を先行した。3回は再び田中幸、松本、宮本の連続短長打で2点を加えた。終盤には上本の左越え満塁本塁打などで2ケタ得点に乗せた。
宮本は米国キャンプ後に肩の違和感を訴えていた。このため投げ込み不足が懸念されていたが、心配は無用だった。経験豊かな投球術は、貧打の東大打線にスキを見せなかった。ただし、である。以前の好調時のタマのキレがいまひとつ。次週までにどう修正するかが注目されるところだ。
打線は課題が浮き彫りになった。とりわけ、クリーンアップトリオだ。3人合わせて13打数0安打。まことに頼りない打席に終始した。大西は萎縮した自信なさそうなスイングを繰り返した。北崎は重心をぐっと下げた打法が自分のものになっていない感じだ。ツボにくれば一発長打が生まれるだろうが、この日はほとんどバットの芯で捉えられなかった。監督がどのようなアドバイスを出来るかである。
期待を抱かせたのが二番手投手の1年生・松下だ。ややサイドからノビのあるストレートを小気味よく投げ込んだ。何より投球のテンポがよい。今後、どのような投球術を身につけるか、成長が楽しみだ。
(S39年入学 六車 護)
4月16日(日) 対 東京大学 二回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 早大 | 4 | 0 | 2 | 0 | 2 | 1 | 2 | 4 | 1 | 16 |
| 東大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
○大谷、須田―笹沢 本塁打:田中幸(3ラン)
<戦評>
1回戦で凡打を繰り返したクリーンアップトリオが、この日は見違えるような打棒を披露した。大西、北崎、松本に途中出場の本田を加えた3人で16打数9安打。この主軸とともに上、下位打者も安打を連ね、18安打で16点を奪い2試合連続の圧勝となった。
まず1回は先頭の上本が四球、手堅くバントで送ったあと、大西、北崎が連打して先制。二死後、田中幸が左翼ポールを直撃する3点本塁打した。3回には三・四・五番が3長短打を連ねるなどで2点を追加。5回以降も得点を重ねた。
東大の繰り出した5投手は、いずれもスピード不足の上に制球力を欠いていた。早大打者はつねに有利なカウントから甘いタマをはじき返した。なかでも大西は第1打席でカウント0-1から積極的に打って出て右前打した。1回戦では自信喪失気味の鈍い振りだったが、この打席はタマを引き付けて振り抜いていた。
次週からの戦いは、相手投手のレベルが違う。ただし、全員がこの試合のようにタマ筋を見極め、積極的に鋭くバットを振り抜けば活路は開けるだろう。
宮本とともに投手陣の両輪を担う大谷はストレートのスピード計時でコンスタントに140キロ台前半をマークした。昨秋リーグ戦は不本意なマウンドが続いたが、最終学年となった今年は気持ちの持ちようが違うように感じられた。それは相手打者だけでなく自分とも「戦うマウンド」だった。
さて、次週からが本当の対抗・リーグ戦だ。みんなが気持ちをひとつにして“この1球”に心を込めてプレーしてほしい。
(S 39年入学 六車 護)
4月22日(土) 対 明治大学 一回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 明大 | 0 | 1 | 0 | 6 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 7 |
| 早大 | 2 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 5 |
●宮本、松下、井上、中村展、須田―笹沢、細山田
<戦評>
明治が四回にとった6点で勝負が決まった。1点を追う明治はこの回、田沼が三ゴロ悪送球で出塁した。
早稲田の先発・宮本は立ち上がりから球が上ずり調子はよくなかった。二回には行田に対し初球ボールのあと、2球目も高目から入るカーブを左翼へ本塁打されている。三回は三振と内野ゴロ二つで立ち直ったかにみえた。しかし四回、三ゴロ失の後にわかに制球を乱した。本塁打されている行田を警戒しすぎたかストレートで歩かせ、清水慎の投前バントには好ダッシュをみせて三封、今浪も2―1と追い込んだ。だが、ボールを続けて四球。松下にも同じように2―1から歩かせた。これで一点を許し1死満塁のピンチを残しマウンドを降りた。
救援に立った松下は中野を一塁フライに打ちとったが、投手の久米に右前へ適時打され3点目をとられたあと大久保に初球を左へ満塁本塁打された。
打線は一回、四回に各2点。六回にも2死から上本の三塁打で1点を返したが、四回の6失点があまりにも大きすぎた。主戦の宮本が乱調では仕方ないが、捕手のリードにも責任の一端があるのではなかろうか。(S27入 増田 稔)
4月23日(日) 対 明治大学 二回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 早大 | 0 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 6 |
| 明大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
○大谷、宮本、松下―笹沢
<戦評>
早稲田が10安打で6点と巧く点をとった。
まず二回、松本が左中間二塁打すると田中幸が右前安打して先取点。生島の右翼線二塁打で二、三塁とし笹沢の遊ゴロ、大谷の1、2塁間を破る安打で3点を先取した。四回にも松本の中前安打を足場に二死1塁から笹沢の左翼線二塁打で1点。七回には大谷の右前安打から上本、前田将の長短打と捕逸でダメ押しともいえる2点を追加した。二、四回の得点はいずれも五番からはじまり下位打線が継いで挙げたものだが、欲をいえば六回から九回までの4併殺が気にかかるところだ。
1回戦に7失点の投手陣は、先発・大谷が七回まで4安打で点を許さず、安定した投球をみせた。昨秋から負傷していたため、本来の投球とはいえなかったが復調したといえる。八回から宮本を連投させた應武監督は「万全を期したもので、調整登板ではない」、とのことだが、これからの宮本に注目したい。(S27入 増田 稔)
4月24日(月) 対 明治大学 三回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | R | |
| 明大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 4 | 6 |
| 早大 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
宮本、大谷、●須田―笹沢
<戦評>
九回に追いついた明治が延長十一回、一挙に4点を挙げ快勝した。
試合は早稲田が二回に宮本の適時打で先行。三回に前田将の投手強襲安打から、2四死球と敵失で1点を追加。宮本が六回に行田に本塁打されたが要所を抑え、八回に大谷に継いで逃げ切りにかかっていた。
ところが9回一死から四球と斉藤陽、田沼の連打で満塁と追い上げられた。八回の守りから1塁に入っていた中村は、変化球(カーブ、スライダー)についていけず三振。続く佐々木は八回にカーブが合わず三振している。だが、大谷―笹沢のバッテリーは直球勝負に出た。1-2後の真ん中に入る直球を佐々木は左前打して同点、延長にもつれこ込んだ。
佐々木の打席をみていながら、どうして変化球攻めにしなかったのか。バッテリーの注意不足が命とりになったといえるだろう。佐々木が十一回に打った決勝の二塁打も、カーブ、カーブが続いたあと、真ん中に入るストレートだった。
バッテリーのミスに加えて5失策という守りの乱れもあるが、敗戦のなかで早稲田に明るい材料は、宮本に復調のきざしがうかがえることだ。
(S27入 増田 稔)
5月6日(土) 対 立教大学 一回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 立大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 1 | 0 | 0 | 4 |
| 早大 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | X | 5 |
○宮本―笹沢 本塁打:田中幸(2ラン)
<戦評>
早稲田は1回裏、1番・上本が中前ヒットで出ると、バントで二進後、三盗をきめて首位打者・松本の中前タイムリーで先制。4番・田中幸も左中間に2号2ランを運んで計3点をもぎとった。この日、打線は好調で、3回には1死二、三塁から5番・生島が一、二塁間を破ってリードを広げる。
宮本がよければ、これで試合は決まっただろう。ところが、左のエースが立ち上がりから不安定。速球はほとんどが136キロどまりで伸びがなく、変化球も決まらない。5回まではなんとか3安打無失点でかわしたが、6回につかまった。立教はこの回、長短4安打を続けて3点。早稲田はその裏、1死二、三塁から笹沢がスクイズをきめて突き放したが、7回には立教・渡辺直の中前タイムリーで1点差に追い上げられた。
宮本は8、9回をしのいで2勝目を飾ったが、攻撃でも気迫を見せた。6回の決勝点は先頭・宮本の四球から始まり、すぐ盗塁。右飛で三進後、スクイズで生還した。二盗はノーサイン。しかもヘッドスライディングは投手として感心しないが、應武監督は「自分がやらねば、と思ったのでしょう。背番号10(主将ナンバー)の重みです」とかばった。宮本はこの日、思うようにならない左腕に代わって、背番号で投げぬいたのだろう。
(S34年入学 生原伸久)
5月8日(月) 対 立教大学 二回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 早大 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | 4 |
| 立大 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
○大谷、宮本、山本―笹沢
<戦評>
拙攻を続けていた早稲田が、同点に追い上げられたあとの七回、代打山川陽(1年:中京)が右前安打。上本の投前バントが内野安打となり、バントで送られ二、三塁。松本が左犠飛して1点。田中幸は1-2後の外角球を右中間三塁打し、1点を追加。2点差とした。この回の攻撃は送りバント、犠飛、適時打とソツのない攻めだったが、それまでの攻撃は二回に北崎の三塁線を破る二塁打で先取点を挙げたものの、一死二、三塁で笹沢、大谷が連続三振。二回以降も毎回走者を出しながら打線がつながらなかった。
じっくり球を見て攻めるのもいいが、せっかくの得点機をつかみながら、消極的とも見える打席は自ら攻めの気運にブレーキをかけているかのようだった。
先発の大谷は四回に二塁封殺の送球を落とした遊撃手に足を引っ張られ、無安打で同点とされたが、よく踏ん張った。対明治戦より低めに球が集まっていたからだ。七回から救援した宮本にもいえるが、復調のきざしがうかがえる。残る課題は、試合ごとに変わる打線が一定することと、内野の守りだろう。
(S27入学 増田 稔)
5月14日(日) 対 法政大学 一回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 早大 | 0 | 1 | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 9 |
| 法大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
○宮本、山本―笹沢
<戦評>
一言で観戦観を語れと問われたら、「痛快な完勝」というほかない。早大は投打が見事にかみ合って法大の連勝を止めた。今シーズンのベストゲーム。逆転優勝へ期待が膨らむ先勝といってよい。
何より頼もしかったのはキャプテン・宮本のマウンドさばきだった。先週あたり、復調の兆しは見えていたが、大事な試合でそれを実証した。彼の好不調のバロメーターは、大きく割れ落ちるカーブだ。シーズン初めの不調のときは曲がりが鈍く落差も少なかった。だが、この日は曲がりの鋭さが蘇って法大打者を翻弄した。
打線は今季4連勝の平野貴を立ち上がりから攻め立てた。先制点は2回。先頭打者、大西が左翼線に痛打、左翼手がクッションボールの処理を誤る間に三塁打となった。一死後、泉が外角球をうまく捉えて右犠飛した。
3回には松本、大西、宮本が3短打を浴びせて2点目を奪った。松本、宮本の安打は人工芝で高く跳ねる内野安打。ともにバットの下っ面でとらえた打球だったが、強く振り抜いていたことで一塁に生きた。
4回も攻撃の手を緩めず平野を攻め、笹沢、前田将の短打で二死二、三塁とし、田中幸が左前に2点適時打した。相手エースに立ち直りのきっかけを与えない3イニングス連続の得点は、ゲームの主導権を握るだけでなく、勝利を手中にする速攻だった。
宮本は2、3回に内野の失策で得点圏に走者を置いたが、動じることなく後続を断った。8回を投げて散発3安打、投球数101のあっぱれな内容だった。
9回は打者10人を送り5点を加えた。攻撃時間で言えば、「早8:法2」の割合か。早大打者たちは塁間を駆け巡り、頼もしい限りだった。さて、肝心なのは第二戦。再び気持ちを引き締めて立ち向かってほしい。
(S39年入学 六車 護)
5月15日(月) 対 法政大学 二回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | R | |
| 法大 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 3 |
| 早大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
大谷、山本、井上、●宮本―笹沢
<戦評>
延長11回、法政は投手の平野貴が2-2から左翼へ本塁打して決勝点。
さらに大引が通算100安打にあと1本と迫る安打すると2つのバントをからませて1点を追加、3回戦に持ち込んだ。
法政が1回に左前安打の大引を送り、西川が一、二塁間を破って先取点。早稲田が6回、2四球で得点機をつかみ、田中幸が左前適時打して追いついた。
得点上では接戦だが、試合内容では早稲田が優位に立っていた。だが、2つの大きなミスがあり延長戦にもつれ込んだのである。1つは1点を追う初回、安打と四球で無死1、2塁のとき三番の松本は送りバントを2度失敗。その後2-3からボール球を強振して併殺に打ちとられた。2-3となってもバントの構えをしてから打ちに出たのだが、この動作がボール、ストライクの判断をにぶらせる結果になったのだと思う。2つ目は6回同点としたあとの1死満塁の逆転機で生島は初球ファールのあと、続く外角ストレートを2球見逃し(2球ともストライク)て三振に退いた。生島はこの試合の五打席でいずれも初球のストライクからうちに出ている。それだけ打ち気でいながら好機での見逃し三振はいただけない。投球は決して難しい変化球ではなかった。
2回から立ち直り無走者に抑えた大谷から左の山本に替え、さらに井上、宮本とリレーしたが、その宮本が打たれたのだから皮肉なものだ。
(S27年入学 増田 稔)
5月16日(火) 対 法政大学 三回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 早大 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 4 |
| 法大 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
宮本、○大谷―細山田
<戦評>
試合を決めたのは早稲田が6回にみせたバントをからませた攻めだった。
先頭の田中幸が死球。続く宮本が一塁線にバント。これを一塁が二塁に送球したが野選となり1、2塁。大西の捕前バントを今度は捕手が三塁に悪送球して1点が入り二、三進。「外野フライを狙えといわれた」という大谷の一打は打ち損じて投手の前に転がり、走者を見たあと一塁に送球したが悪送球となった。
これで満塁、本田が中前安打してこの回の2点目が入った。
バントはいずれも初球。それもうまく打球の勢いを殺していたためあせった野手の失策を誘ったのではないか。
法政は平野貴、早稲田は宮本と、ともに三連投で平野貴が2回に二死から安打をはさむ2四死球で満塁とされ細山田に右翼線二塁打され2失点。宮本も2回裏二死か三連打で1点をとられた。宮本は5回一死1、2塁で大谷の救援を受けたが、この日は五番に入っていたため投手から一塁に回り、結果的にこれが打線のつながりを呼んだといえる。
捕手と遊撃手の二つのポジションに細山田と本田を入れて法政の3失策に対し無失策で守りきれたのも勝因の一つに挙げてもいいのではないか。
これで法政、早稲田、慶応、明治の四校が勝ち点「3」で並び、優勝争いが面白くなってきた。
(S27年入 増田 稔)
5月28日(日) 対 慶応大学 一回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 慶大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 早大 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | X | 3 |
○宮本―細山田
<戦評>
野球をこよなく愛した慶応の故小泉信三塾長は、たとえ優勝しても、早慶戦に負けたら機嫌が悪かったという。
雨で順延となったこの日は観衆28,000人。両校の学生応援席は満員で、早稲田は、外野の学生席に入れない学生が一般席にまであふれた。
試合は、もちろんエース対決。早稲田の主将左腕・宮本は、立ち上がりから快調に飛ばした。先頭・仁科にボテボテの三塁内野安打を許したが、1死二塁のピンチは三振と二ゴロでしのぐ。その後も5回までは3安打無失点。力みがないだけ左腕がよく振れて、伸びのよい速球は140~143キロを連発した。
初めて調子を乱したのは6回表。死球とバントで2死二塁のあと、四球を出すと、捕手出身の応武監督がすかさずマウンドに行った。
「打たれてないじゃないか。ここは1点はしかたがない。ピッチャーは点を取られるものなんだ。思い切って攻めていけ」
このあと遊撃内野安打で一、三塁となったが、宮本は監督の檄(げき)に応えて後続を断ち、昨年春の法政戦以来、通算4度目の完封勝利を飾った。
攻撃では5番・小野塚と6番・大西が働いた。1回裏、早稲田は2死一、二塁から小野塚が三遊間を破って先制。なお一、二塁で大西の一塁内野安打が悪送球をさそって追加点をゲットした。
大西は三回にも2死二塁からレフト線二塁打で貴重な3点目を奪い、クリーンアップを打てる素質を実証した。しかし、問題は一塁守備だ。4回、慶応の先頭・金森宏の一塁内野安打はさばいてやらなければ投手が気の毒だし、6回、2死一、二塁の内野安打は、遊撃・本田の遠投ワンバウンドをそらしたもの。打力を生かすためにも、守りの努力を期待したい。
(S34年入学 生原伸久)
5月29日(月) 対 慶応大学 二回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | R | |
| 早大 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 0 | 6 |
| 慶大 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 4 | 0 | 0 | 0 | 1X | 7 |
大谷、山本、井上、松下、●大前―細山田、笹沢、佐伯 本塁打:田中幸(3ラン)
<戦評>
早稲田は、快調なスタートを切った。1回表、先頭・上本が歩いて前田将が内野安打。バント失敗の1死1、2塁で4番・田中幸が左に先制3ラン。先発が右のエースで4勝、防御率トップの大谷であることを考えると、あと一押しで連勝の可能性は強かった。
2回も1死後、細山田が中前安打したが、大谷が送りバントを失敗。2死後、上本のヒットがでたものの、後が続かない。4、5、6回も先頭打者がヒットや四球で出塁し、5回は二塁へ、6回は三塁まで進んだが、あと1本がなく追加点のチャンスをつぶした。この間、5回の前田を含めて計3回のバント失敗があり、雑な攻撃が後半に不安を残した。
先発の大谷はいつもの速球が少なく、変化球に頼る投球。4回は暴投で1点を献上し、5回には2死から仁科のタイムリー2塁打を浴びた。
早稲田が中盤もたつく間に1点差に追い上げた慶応は6回、代わった左腕・山本を岡崎の2点タイムリー2塁打でKO。リリーフの井上も打ち込んで、この回、打者一巡の4点で一気に逆転した。
早稲田の敗因は、バントミスも手伝って中盤に加点できなかったことだが、明るい材料もあった。2点差で迎えた9回、2長短打と2死四球で同点に追いついた粘りと、初の早慶戦で好投した松下、大前の1年生コンビだ。
7回に登板した明徳義塾卒の松下は、躍動感あふれる投球で1安打無失点。社高校卒の大前は、1m86の長身から重い速球と割れ落ちるカーブで8回から好投した。延長10回には無死満塁からサヨナラ安打を許したが、早慶戦のプレッシャーに負けないあっぱれな投球だった。
(S34年入学 生原伸久)
5月30日(火) 対 慶応大学 三回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
| 慶大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 2 |
| 早大 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | X | 8 |
○宮本、松下、大谷―細山田
<戦評>
前日の2回戦とよく似た試合展開になった。早稲田は1回裏、前田将、松本の連続ヒットと田中幸の四球で1死満塁のあと、小野塚の中前タイムリーで先制。続く大西も左中間に2点タイムリー二塁打していきなり3点をリードした。
ところが2回以降は、立ち直った3連投の慶応・加藤に沈黙。またも安打出塁の先頭打者を還せない拙攻を繰りかえす間に6回、エース・宮本が捕まった。
この回、慶応はヒットの仁科と宮田を2死2、3塁において遊ゴロで1点。8回にも、1死1塁から松尾卓が左中間に二塁打して1点差に迫り、宮本をKOした。
しかし、ここからのドラマは前日と違った。8回裏、早稲田は三遊間を破った田中幸をバントで送り、山川陽が左前ヒットで1、3塁。ここで、マウンドから一塁に回っていた7番・宮本が1、2塁間を抜いて貴重な追加点をもぎとった。
1回戦の完投に続いて2回戦もリリーフした慶応の先発・加藤は、この日も2回から立ち直って気迫の投球を続けていたが、この2点差で気力が切れた。早稲田はなお1死後、上本、前田将、松本の上位打線が3長短打をあびせる打者一巡で計5点を奪い、春のリーグ戦を2位で終わった。
宮本は5勝目を飾り、防御率は1位の大谷に続いて2位。早稲田は打撃ベスト10にも松本が3位、前田将が6位にはいった。
(S34年入学 生原伸久)
